佐々木香織さんのSTORY 合計6度のがん発覚・再発・転移。すべての経験を、仲間の笑顔に変える

「私のがんは、こういうタイプなんだ」
少し話を戻しますが、最初の腸の手術後は、一時的にストーマ(腹壁に腸管を露出し、排便できるようにするもの)の状態でした。私のがんは肛門から近い場所にあって、手術の縫い目から便が漏れてくる可能性がある。そうならないように、傷が落ち着くまでの処置ということでした。
「一生続くわけではないから」と、このときもあまり気にしていませんでしたが、ストーマを閉じた後、排便障害に悩まされるようになったんです。直腸は、便を一時的に溜めておく部分。そこを切ったので、便意を感じたらもう出てしまうというような状態です。
外食をしていても、「ごめんね」とトイレに走る。せっかく家族でお出かけしても、まったく楽しめません。しかも1度に便を出し切れず、何度もトイレに行くので肛門が痛くなる。家事をしていても仕事をしていても、1日中お尻のことばかりが気になってしまいます。こんなに苦しい生活は続けたくないと、改めてストーマを作る手術をすることに決めました。
やっとの思いで排便障害はなくなり、最高の気分。ついに本当の自分を取り戻した感覚です。でも、手術後の組織検査で、がんの局所再発(手術した場所の近くに新たにがんが発生すること)が発覚したんです。最初の手術から2年と3カ月後、2021年1月のことでした。
定期検診の画像検査では、見つけられないタイプのがんだったのでしょう。ステージ1からの局所再発は稀ということで、そのタイミングで見つかったのは幸運だったと思います。でも、やはり「最初の手術でしっかり取り除けていたら、また怖い思いをせずに済んだのに」と考えてしまいます。
直腸がんになって、肺への転移が見つかって、さらに局所再発。こんなにも繰り返すものかと思っていましたが、さらにさらに、それから2度も肺転移を繰り返すことになります。
手術の度に入院する病院は病室からの景色がよくて、毎回「この景色も見納めか。今回で卒業だな」と思うのに、また帰ってくる。繰り返しているうちに、「もう、ここは私のホームグラウンドなんだ」と感じるようになりました。手術はしても元気に過ごせていましたし、変な話ですが、慣れたんですよね。「私のがんは、こういうタイプなんだ」と考えるしかない。少しずつですが、がんを受け入れることができるようになったんだと思います。