佐々木香織さんのSTORY 合計6度のがん発覚・再発・転移。すべての経験を、仲間の笑顔に変える

がんを繰り返すのは、それが私の役割だから
最初の肺転移がわかった頃、自分の生きた証を残したいと考えるようになりました。以前からお花を鑑賞する様子をYouTubeで配信していたけれど、ある若い子宮体がん女性の動画を見てからは、自分の病気についての内容に変えました。世の中には大腸がん患者の発信が少なくて、ニーズがあるかもしれないと思ったんです。
自分の治療の様子やがんに関する知識などについて配信を続ける中で、たくさんのがん患者仲間とつながることができました。例えば動画で「排便障害が辛い」と言えば、「僕も同じ症状です」といったコメントがたくさん届きます。
いちばん嬉しいのは、「落ち込んでいたけど、明るくなれた」という言葉。私にはがんの治療はできないし、医学的なアドバイスもできない。でも、心の持ちようを変えるきっかけになれたと感じるんです。
私は何度も再発や転移を繰り返していますが、いつも元気です。元々ポジティブな性格もあって、病状が厳しい方の目には、私の姿がわずらわしく映るときがあるかもしれません。元気の押し売りになっていないかと、いつも心配しています。
でも少しでも明るい気持ちになれたら、心が楽になりますよね。必要なのはきっかけ、1つのスイッチなんです。そのスイッチは人によってさまざまだけれど、たまたま流れてきた私の動画を見て気持ちが変わることもあるかもしれません。
それに、私の動画にコメントをくれた方同士が仲良くなることもあります。自分を通して、がん患者仲間のつながりを作ることができる。その広がりをもっと大きくしたいと考えて、2023年5月に「ピアリングブルー」というコミュニティーを立ち上げました。消化器がん患者を対象にした、情報交換と支え合いの場所。会員のみなさんが匿名で投稿することで、お互いに情報交換ができます。オフ会やオンラインのセミナーといった交流も大事にしています。
同じ経験をした人同士の相互サポートを、「ピアサポート」といいます。多くのがん患者は、孤独感に苦しんでいます。仲のいい友達であっても、なかなか踏み込んだ話はできません。がん患者が心置きなく病気の話をできるのは、相手もがん患者のときだけです。
ピアサポートは、患者にしかできないすごく尊いこと。私も落ち込んだときは仲間たちを思い浮かべて、「私も頑張らないと」と考えることができます。患者同士で励まし、励まされるつながりが本当に大切なんです。
現在、ピアリングブルーへの入会は女性限定で、会員数1,000人(2025年2月現在)です。これからもっと仲間を増やし、孤独に苦しむ人を少なくできればいいなと思っています。
私の人生、「がんだ」「転移だ」「再発だ」と、なぜこんなにも降りかかってくるのか。それはもう、私の役割なんだろうと思っています。すべての経験は、誰かを励ますためのネタになる。まだまだ知らないこともあるので、これからも経験が増えていくのかもしれません。いい加減、もういいだろうと思うときもあるけれど。