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佐々木香織さんのSTORY 合計6度のがん発覚・再発・転移。すべての経験を、仲間の笑顔に変える

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身体は変えられなくても気持ちは変えられる

落ち込んだり、ポジティブになったり。感情を行きつ戻りつしながら、私はがんを受け入れてきました。でも、話はまだ終わりません。
2024年4月、定期検診でまたもや局所再発がわかりました。膣の端にがんが見つかり、その部分を取るためには、近くにある子宮も全摘出しないといけない。臓器が密集している場所で、「これまでより難しい手術になる」と言われました。
そうして手術の際に、子宮の近くにある膀胱が傷付いてしまった。膀胱膣瘻という状態が、いまでも続いています。通常は尿道から出る尿が、全部膣に流れ込んでくる。排尿を自分でコントロールできず、常に出てくるので、おむつを履いて過ごしています。

それまでは、「手術をしたら身体がよくなる」の繰り返しでした。がんではあっても、身体は元気。それが大きな救いだったんですね。私は旅行が大好きで、「次の手術が終わったらまたどこかへ行こう」と毎回楽しみに頑張って、実際に海外へ行っていました。
でもこのときから、がんは取れたのに、生活への影響は残ったままです。朝、オムツが濡れていないことを期待して起きる。もちろん状態は変わっていなくて、また落ち込む。そんな日々の繰り返し。これまでの闘病生活の中でも、いちばん苦しい時間になりました。
何度もがんが発覚して、それを受け入れることはできてきたけれど、「手術をしてもよくなれない自分」を認めることはできませんでした。以前、ある人に「治らないものは仕方ないよね」と言われたことがあります。励ますつもりで言ってくれたのはわかりますが、私自身はまだまだあきらめたくない。「何か手はあるはず」と考え続けていました。
いろいろな治療の選択肢が出てきましたが、私の身体の状態を考えると、どれもダメ。ことごとく希望が打ち砕かれていき、「何もできない」と悟ったときにやっと受け入れることができたんです。「ああ、仕方ないんだな」って。
いまだに、「普通に排尿できる自分」は何より取り戻したいものです。家族が当たり前のようにトイレに行くのを見ると、「ずるい」と思うときもあります。それでも、気持ちの折り合いは付くようになりました。身体の状態は変わらなくても、気持ちを変えていくことはできるんです。

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