池田和泉さんのSTORY 「今日も、生きてるじゃん」。「不安」を「覚悟」に変えた一歩

毎晩ひたひたと迫ってくる死への恐怖
手術の前に、1カ月くらいかけていろいろな検査を受けました。どれも大変で、特にお尻から造影剤を入れる「注腸検査」がきつかった。ただ、腸の手術は素晴らしかったです。ストーマ(人工肛門)になっちゃったのは辛いけれど、痛みは一切なくなって、「なんだ、こんなに楽になるんだ」ってびっくりしました。
肝臓のがんは背中側の真ん中にあって取りづらいということで、なるべく小さくしてから手術するために抗がん剤治療を始めました。薬の副作用はありましたが、想像していたほどではありませんでした。
腸の手術から4カ月後に肝臓手術です。開腹手術って本当に大変なんですね。手術後すぐにはベッドから起き上がれず、ストーマのパウチも看護師さんに交換してもらっていました。1週間くらいは自分の病室に戻れず、ようやく退院するときには筋肉が落ちて、ちょっとした上り坂もゆっくりにしか歩けないくらい。しばらくは杖をついていました。
これでひと段落かと思っていたら、肝臓の手術から1年も経たないうちに、CTで肺に2センチの影見つかりました。その3カ月前には異常がなかったのに。崖から突き落とされるような気持ちになりましたが、手術をして、現在は経過観察で過ごせています。
がんと告知されてからは、毎晩寝る前に恐怖に襲われました。暗い部屋にいると、死が迫ってくる感じがするんです。ひた、ひた、って。次はどこに転移するかわからない、いつ急変するかもわからない。最初は漠然としていた恐怖が、だんだんと具体的になっていきました。
ただ、病気について自分なりに勉強してみると、死への恐怖もちょっとだけ変わっていきました。Twitter(現・X)を通して、同じステージ4の患者さんが元気に生活していることも知って、「ステージ4=もう後がない人」といったイメージは薄れていきました。手術から1年半くらい経って経過観察に入ってからは、少しずつ前向きに考えられるようになりました。