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池田和泉さんのSTORY 「今日も、生きてるじゃん」。「不安」を「覚悟」に変えた一歩

私は今日も生きて、未来を考えることができる

先日、ストーマになった人たちを集めたイベントがあったんですが、最後に写真を撮ったら、みんな顔を伏せちゃいました。前を向いていたのは、私ともう1人だけ。参加していたのは、術後2~3年くらいの人がほとんどです。やっぱり、病気を受け入れるには時間がかかるんです。
私もはじめの頃は、実感がないまま、「検査だ」「治療だ」と波に流されていました。人のアドバイスは耳に入ってこないし、前向きになんてなれない。がんになったことやストーマになった自分を受け入れることができたのは、もっともっと後の話。経過観察が続くようになってから、ようやく、少しずつです。

何かひとつのきっかけで楽になるということはありません。でも、時間が経つうちに、だんだんと未来のことを考えられるようになるんだと思います。
10年後はわからなくても、今日、明日のことは考えられる。いまはそれだけでも幸せです。SNSで知り合ったがん患者の方は、毎朝「おはよう、今日」って投稿していました。私はそれに「未来」を付け足しています。「おはよう、今日&未来」。迎えられた朝に感謝です。「今日も生きてるじゃん」って思いながら、何年も投稿し続けています。

手術から5年。先日、「私、これからは自分を最優先に生きます!」って宣言しました。夫にも「休みの日に出かけるから、お昼はお弁当になるよ。電子レンジはこうするんだよ」って教えています。最近は、がんになる前から好きだったゴルフも楽しんでいます。
夫は、脳出血の症状は落ち着いていますが、2年前にパーキンソン病を発症して、徐々に体が動きにくくなっています。いまは要介護2で、リハビリに週2回行っています。私はまた主人をサポートする立場だけれど、「お互い助け合わなきゃね」って言っています。先日はテレビ番組で遺言書を取り上げているのを見て、2人とも遺言書も書くことにしました。

少しずつ、少しずつがんのことを意識する時間が少なくなってきています。ただそれは、がんに対する不安がなくなったわけではありません。困難な現実に出会い、もう長くは生きられないと思ったけれど、そこで立ち上がって一歩踏み出す勇気を持てた。病気を否定するのではなく、がん患者として生きていく覚悟ができた。だからこそ、自分のやりたいことも見つかりました。自分で自分を褒めたいと思います。
病気を否定したって、何にもなりません。線路を歩んできたとき、たまたまがんにぶつかって、強制的に道を変えられてしまった。でも、その先にはたくさんの切り替えポイントがあって、自分で進む先を選ぶことができます。
どの道にも、正解はない、間違いもない。ただ言えるのは、がんで人生を決められたように思っていたけど、その先でも切り替えられるということ。これはほかの病気や交通事故でも同じでしょう。親との別れや夫の病気だって同じです。
もう、私は腹をくくりました。いいじゃない、どうせいつかは死ぬんだし。大きな病気をしたんだから、やりたいことをやっちゃえ。同じように人生の時間を使うなら、明るく元気に楽しく暮らしていきます。

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