榊原由佳さんのSTORY 「私」が納得できるまで。一つひとつの選択が”いま”へとつなぐ

乳がん治療の直後に見つかった大腸がん
治療を進める中で、放射線の臨床試験に興味を持ちました。放射線を当てるグループと当てないグループに分かれて、病状の経過観察をするものです。
私は、抗がん剤と手術で腫瘍が消失したため、放射線医師からは「最近では、その後の放射線を受ける必要はない」と言われました。相談した人のほとんどには、「つらい治療に耐えたのだから、これ以上の治療は受けなくても」と言われました。でも、臨床試験でがん治療の研究が進めば、今後の患者さんがより良い治療を受けられるかもしれません。
私は以前からめまい持ちで、お世話になっていた先生にも相談してみました。乳がんは手術をしても数年後に再発のリスクや不安があります。先生は、放射線治療を受けておけば、安心材料にはなるだろうと教えてくれました。「放射線のチームに入らなくてもいいし、入れば治療を受けられてラッキー」と考えて、臨床試験に参加することを決めました。
ところが、ここで思いもよらないことが起きたんです。臨床試験の前に、全身にがんがないか改めて検査する必要がありました。そこで初めてPET-CT検査(がんの有無や広がりを診るPET検査と、CTスキャンを合わせた検査)を受けたら、がんらしきものが見つかりました。その後、大腸がんの内視鏡切除を受け、病理検査の結果、早期の大腸がんでした。乳がんからの転移ではありません。
最初にがんが見つかったときより、ずっとショックでした。やっと大きな治療が終わったところだったのに。新たながんが見つかったことで、臨床試験も受けられなくなってしまいました。
いまのところ再発はありません。手術から1年後に内視鏡検査をして、何も見つからなかったので、それ以降は検査が2年に1回になりました。2023年、術後5年が経過したところです。