榊原由佳さんのSTORY 「私」が納得できるまで。一つひとつの選択が”いま”へとつなぐ

経験を活かして人の役に立ちたい
自分ががんだとわかったとき、がん患者さんの「希望の光」になりたいと思いました。イベントやコミュニティを代表するようなことは性に合わないけれど、ピアサポーターのように、人々の悩みに寄り添っていきたいと思いました。
臨床試験に興味を持ったのも、今後がん治療を受ける患者さんの役に立てると考えたからです。でも、大腸がんが見つかったことで、臨床試験は結局受けられなかった。それなら別の方法で、何かできることはないかと、興味のあるイベントやセミナーに顔を出すようになりました。
最初に参加したのは、乳がんの早期検査を呼びかけるイベント「ピンクリボンウォーク」です。病院で知り合った友達を誘って、一番短いコースを一緒に歩きました。また、日本対がん協会の企画で、資生堂の方に自分に似合う色を診断してもらったこともあります。
いろいろな活動に参加すると、闘病経験のある方にたくさんお会いします。私は幸い抗がん剤がよく効き、手術も受けられましたが、知り合った方の中には、ステージ4で闘病中の方もいます。がん以外の病気の方に会うこともあります。
本当に大変な状況でも笑顔で頑張っている方を見ると、自分にももっとできることがあるかもしれないと励まされます。これまで出会った方、これから巡り合う方との出会いを、一層大切にしたいと思うようになりました。
私が出席している団体やイベントには、患者だけではなく、医師や看護師、保険会社など、さまざまな立場の方がいます。患者だけの集まりだったら、つらい体験談を話すだけの会になってしまうかもしれません。患者同士で話す場ももちろん必要だと思いますが、別の視点からのアドバイスが自分の学びにつながると感じています。
何にしても自分が、はじめの一歩としてアクションを起こすことで次につながっているように思えます。自分にとって、向かうべきところに行っていると思います。
不思議に思うのは、出会いでつながり、それがまた新たにつながり、自分がやるべき所に流れているような感覚があることです。そして、その時、その時で、必要な扉が開かれているように感じます。
こうやって振り返ってみると、闘病生活を通じて、自分が優先すべきことは何かをよく考えるようになったと感じます。優先順位の一番は、自分の身体です。抗がん剤治療の間は、「腫瘍が消えますように」という気持ちで身体に語りかけていました。いまでも「今日はよく頑張ったね」と声をかけます。
身体を労り、無理をせず、会いたい人に会って、行きたいところに行く。のんきな性格なので、「罹患後の自分のほうが元気じゃん」なんて思っています。