榊原由佳さんのSTORY 「私」が納得できるまで。一つひとつの選択が”いま”へとつなぐ

「正解」はだれも教えてくれない
病気になったら、どのように治療が進んでいくかはすべて決まっていて、病院で教えてもらえると思っていました。でも実際は、自分で選択するタイミングがたくさんあります。最初にクリニック探しをして、告知の後に治療を受けられる病院を探して、臨床試験に参加するかどうかも自分で考えて。何もわからない中で、一つひとつ決める必要がありました。
私が選択するときに基準としていたのは、「納得感」だったと思います。自分が何を大切にしているのか、それはどうして大切なのか。納得して選ぶことで、次に進むことができました。
周囲は、良かれと思っていろいろ言ってきます。私も知り合いにおすすめの病院を聞いたり、アドバイスを求めたりしたことが何度もありました。でも、最終的には自分で決めた方がいいと思うんです。
人の行くべき方向はそれぞれ違います。何が正しいかは実際にはわかりません。もしくは、その人にしかわからないこともあります。「誰かに言われたから」と選んだ場合、その選択が結果として良くなかったとき、せっかく助言をしてくれた人に対してネガティブに考えてしまうかもしれません。
私が最初に行ったクリニックは、友人がすすめてくれたところでした。でも、決めたのは私。結果的に、私には合わなかったけれど、そのおかげで改めて病院探しをして、いい先生に出会えました。その病院で臨床試験について知って、大腸がんも見つかった。検査を受けていなければ、いまごろどうなっていたかわかりません。
自分で決めたとしても、後で選択を間違えたと思うこともあります。後悔することもあります。でも、納得して選んだ結果であれば、自分の責任として受け止めることができます。「違うな」と思ったら、修正すればいいだけのこと。自分で選び直せばいい。私なんて修正だらけです。
一方で、自分で考えて選ぶには、正しいエビデンスに基づく情報収集が大切です。人に聞いたり、イベントに出席したり。がんに関係するコミュニティに参加するようになりました。
病気を患っているときは、外に出る元気がなくて、なかなか出席できない場合もあると思います。がんになったことを周りに知られたくない人も多いと思います。でも、人に会って相談したり、情報を集めたりすることが、自分の助けになると思います。
先日、以前勤めていた会社の同僚が、秋にがんで亡くなったことを知りました。その方は、亡くなる前日まで仕事をしていたそうです。聞けば、高校生のお子さんがいるシングルマザーだったとのことです。
どんな治療を受けていたかはわかりません。亡くなる2年位前からは、完全在宅勤務。彼女は周囲に相談していただろうか。傷病手当を受け取って休職し、治療に専念できなかったのだろうか。また、彼女は自分のやりたいことができたのだろうかと思いました。彼女の話を聞いたとき、とても切ない気持ちになりました。