鈴木 誠さん(仮名)のSTORY もう、間違えない。”サビ”を落として新しい自分になる

1日3時間のリハビリだけでよくなるわけがない
症状が落ち着いてからは、リハビリに取り組みました。
作業療法では、新聞紙をぐしゃぐしゃにしてから、それをまた広げるというような動作を行ったのを覚えています。理学療法は、廊下の手すりを使って歩く練習が中心でした。先生に「麻痺のない左の手足も一緒に動かすように」とベッドの上でできるリハビリを15種類ほど教えてもらい、朝と夜寝る前に1時間ずつ、毎日行いました。
一番印象に残っているのは、言語療法です。大きな鏡に自分の姿を映して、「あいうえお」と口を動かし、動作を確認します。「これでは簡単すぎるな」と思っていたら、思わぬものが役立ちました。
私は大の鉄道ファンで、友人が「これでも読んで暇つぶせよ」と時刻表をお見舞いに持ってきてくれた。それがリハビリにうってつけだったんです。時刻表に書かれている駅名なら、50音が入り混じっていて発音が難しいのでちょうどいい。駅名を読み上げながらスマホで録音し、発音が弱いところをチェックして練習します。先生には、「時刻表でリハビリするなんて聞いたことがないよ」と驚かれました。
搬送された総合病院を3週間で退院し、4月にリハビリ専門の病院に移りました。ここでの入院はちょうど3カ月です。毎日、理学療法と作業療法でリハビリを行いました。
理学療法士の方の言葉を、いまでも覚えています。「毎日数時間の作業療法と理学療法だけで、治ると思わないでくださいね。私たちはリハビリの方法を教えているだけです」。一日に2、3時間だけリハビリして、あとはテレビを見て寝てしまっていたら、治るわけがありません。自分でどれだけ頑張るかによって、回復の度合いが大きく変わります。自由時間にもなるべく体を動かして、リハビリに励みました。