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鈴木 誠さん(仮名)のSTORY もう、間違えない。”サビ”を落として新しい自分になる

もう、自分に負けたくなかった

リハビリでは、作業療法士の方に「すべて元通りにはなかなかなりません。優先的にできるようになりたことはなんですか?」と聞かれました。私の希望は、利き手である右手で箸を持つこと、文字を書くこと、それと両手でパソコンを打つことでした。
仕事はSE(システムエンジニア)をしています。システム開発の上流工程で、お客様に課題をヒアリングし、システムを構築する仕事を長年続けてきました。総務などの事務系の仕事に就く選択肢もあったかもしれませんが、私はやっぱりSEとして復帰したかった。
麻痺のない左手を動かすほうが、右手を使うよりは簡単です。でも、ずっと左手しか使わなければ、二度と右手が回復しないかもしれません。以前のようには動かないとしても、できる限り元に戻したいと考えていました。
病気になる前の私は、何かあったら他人のせいにばかりしていた。お酒やギャンブルに逃げてばかりいた。もう、自分に負けたくなかったんです。倒れたとき、両親は泣いていました。50歳近い男が80歳過ぎの両親を泣かせるなんて、こんなに情けないことはない。車椅子や寝たきりの生活になってしまって、両親に世話をかけるわけにはいきません。自分でなんとか立ち直り、信頼を取り戻さなければいけない。
父や兄には、「身から出たサビ」だと、厳しく叱責されました。でも、私がリハビリを頑張れたのはそのおかげです。優しい言葉を掛けられていたら、きっと甘えてしまっていたと思います。
頑張った甲斐あって、身体は順当に回復していきました。脳内出血にもさまざまな症状があるので一括りにはできませんが、もし同じ病気で悩んでいる方がいれば、「前を向いて、どんどん積極的にリハビリしよう」と伝えたい。完全に元に戻るのは難しいかもしれないけれど、少しずつでも病気になる前の体に近づいていけるように、積極的にリハビリに励むことが大事だと思います。

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