川上智美さんのSTORY 「病気の自分」を受け入れる。ストーマが可愛くなるまで
4度目の再発でついにストーマを装着
2020年に4度目の再発がありました。1度目の再発と同じ、直腸です。手術前には必ず医師から、どのような手術で、どのようなリスクがあるかなどを、詳細に説明してもらいます。その際、今回は直腸をあまり残せないかもしれないと言われました。直腸が残せなければ、ストーマを装着するしかありません。
ストーマは、初めての再発のときには回避しましたが、いつか避けられなくなるかもしれないと感じていました。すでにストーマを装着している友人も増え、考え方が変わり始めていたとも思います。
6度目の手術は、10時間を超える大手術でした。手術中に夫が呼ばれ、ストーマになってもいいかと最終確認をされたそうです。インオペ(手術不能)にする選択肢もありましたが、夫も私が覚悟しているのを知っていたので、「本人も納得してるから、手術を続けてください」と、答えたそうです。
手術室で目が覚めたとき、両側から肩をポンポンと叩かれました。見ると、ベッドの両側に主治医とその先生に学ぶ若い先生が立っています。先生たちは、「ごめんね。ストーマになっちゃった」と申し訳なさそうに言いました。
6回目の手術にして、ついにストーマが身体に付きました。ずっと避けてきたストーマ。入院中は、看護師さんがときどき交換しに来てくれます。その様子を見ながら、「本当にストーマになったんだ」と少しずつ実感が湧いてきました。
がんが発覚したときから、仕事は絶対に辞めたくないと考えていました。仕事を辞めて暇な時間ができると、ネガティブなことばかり考えてしまいそうだからです。
しかし、術後2日目でまだ集中治療室にいるときに、所属していた派遣会社に電話して辞職の意志を伝えました。ストーマになったら、どういう生活になるかわからない。フルタイムで働く自信がありませんでした。勤務先では対人の仕事もあります。ストーマ自体は服で見えなくても、音がしたり、においが漏れたりするかもしれない。もしそんなことが無かったとしても、ストーマを付けて仕事をすることに対して、心配が消えることはありません。
学生時代からアルバイトを始め、休みなく働いてきました。病気は、「ちょっと休みなさいよ」という身体からの合図だったのかもしれません。派遣先が手術の2カ月前に変わったばかりで心苦しくはありましたが、仕事をきっぱり辞めました。