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谷田孝子さんのSTORY 10年後の卒業証書。病気を通して知った、過去の自分、本当の自分

夫へ伝える、子供たちに伝える

自分の病気について、夫には大きな病院での受診後に伝えました。詳しい治療方針の説明には夫の同席が必要だったんです。ひどい話ですよね。ある日急に言われるんですから。夫は何も言えずに固まっちゃって。説明の当日も、私が先生と話して決めるのを、横で黙って聞いていました。私は自分のことでいっぱいいっぱいで、夫に配慮する余裕がなかったんです。
子供たちに伝えたのは、抗がん剤治療が始まる前です。髪の毛のことを考えると、言わないわけにいきませんでした。
4人で近所のファミレスに行って、みんな結構ご機嫌で。そこで「ママ、がんになっちゃったから、入院しなきゃいけないんだよね」って打ち明けると、娘たちは無言。息子は「えっ、ママ死んじゃうの?」って。お姉ちゃんたちも本当は聞きたいけれど、弟がいろいろ聞いているから言えなかったんだと思います。後々、子供たちに「急にあんなところで言われてびっくりした。何であのタイミングだったの?」って聞かれたけれど、いまでも、なぜなのかわかりません。

治療が始まってすぐの頃は、家族が気を使って病気のことを話題にしないでくれていました。でも、息子はあえて私の髪の毛のことを言ってくるんです。病気のことをネタにして、笑いに変えてくれようとしていたんですね。
すごくうれしかったのが、遊園地でグルグル回る遊具に息子と2人で乗ったとき。息子は初めて乗るから怖いはずなのに、「カツラが落ちないように、僕が押さえておくから」って片手で私の頭を抑えてくれました。ほかにも、息子が「一緒にやろう」って誘ってくれて、みんなでゲームをしたり。普段子供たちが遊んでいるようなゲームは難しくて私にはできないから、テレビでできる卓球のゲーム。みんな本当は、そのゲームをやりたかったわけじゃないんだろうけれど。

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