{@ member.last_name @} {@ member.first_name @}

野中美紀さんのSTORY もしも娘が自分と同じ病気になったら。「いのちを優先した選択」のできる文化をつくる

自分が救われた体験をより多くの人へ届ける

実際に治療が進んでいく中で、悩んだのはやっぱり髪の毛についてです。抗がん剤治療やホルモン療法の副作用で、髪の毛が抜けてしまう。そこから生えてきても円形脱毛症ができたり薄毛になったりして、ウィッグを使わないと隠せなくなりました。いろいろ探したけれど、納得できるものがありません。バリエーションも少ないし、人工毛のウィッグはやはり不自然で、お人形さんのような雰囲気になってしまうんです。
それでも良いものがないかとネットを探していると、人毛100%の商品を見つけました。病気になる前からお世話になっていた美容師さんに相談したら、「ウィッグを切ったことはないけれど、大丈夫」と。久しぶりに美容室で髪を切ってもらうと、視界がパッと澄み切るような感覚。それまでずっと下を向いていたのが、上を向けるようになった。とても晴れやかな気持ちで、毎日が楽しくなったんです。
髪の毛について、同じように悩んでいる人たちはたくさんいるはずです。私と同じ体験を多くの人にしてほしい。それに、もし自分の娘が将来同じ病気になったときに、少しでもケアしてあげられるような世の中にしておきたい。医療者ではない自分がやれることはなんだろうと考えたときに、自分にとっては髪の毛がいちばんの悩みだった。その解決方法があると知ったのが、ウィッグを提供する会社を立ち上げたきっかけです。
会社名はSUMIKIL(スミキル)。美容師さんにウィッグを切ってもらったときに感じた気持ちが由来になっています。ビジョンは「髪を着る」。洋服やアクセサリーのように、当たり前にウィッグを身に着けられる世の中にしたい。欧米では、普段からウィッグを楽しむような文化があります。壮大な話になりますが、日本にもそうした文化をつくりたいと考えています。

次のページは:起業時に固めた「継続する覚悟」