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千田律仁さんのSTORY 「もう一度だけ、チャンスをください」大切なことに気付いた“人生のやり直し”

妻は1週間ずっとベッドの横にいてくれた

手術を受けて入院している間は、傷口が痛くて、自分で寝返りを打つこともできませんでした。身体を動かしたいときには妻に頼んで、ベッドと体の間にタオルを挟んでもらう。妻は、朝10時から夜8時まで、大部屋の丸椅子に座り、私が合図する度にタオルの位置を変えてくれました。
1週間ほど経ち、やっと水が飲める程度に回復して、少し自分に余裕が出てきました。そこでベッドの脇で本を読む妻を見て、初めて疑問に思ったんです。一日中私の隣にいて、いつご飯を食べているのか。聞いても、ごまかそうとするので「だめじゃん、ちゃんと食べなきゃ」と咎めると、遠慮がちに言いました。「だって、あなたが食べていないのに、食べられるわけないでしょ」。
この言葉にハッ!  としました。この1週間、私は自分のことしか考えていなかった。つきっきりで看てくれる彼女に、「ありがとう」の一言も伝えていません。
当時、私達夫婦の関係は決して良好とは言えませんでした。それなのに、1週間、十分に寝ることも食べることもできないまま、笑顔で一生懸命に付きっ切りの世話をしてくれている。その姿を見て、「なんでここまでしてくれるの?」と素直に聞きました。すると彼女は迷いなく、「夫婦なんだから当たり前でしょ」と答えたんです。
この言葉が、私にとって今でも決して忘れられない言葉であり、私の生き方を変えるきっかけになりました。無償の愛は本当に大切なものは何かを気付かせてくれる。自分に足りていないものは何だったのかを気付かせてくれました。そう、がんになったのは、自分の人生を修正するためだったんです。「変わろう。残された時間で少しでも成長し、人の役に立って生きていきたい。自分のためだけに生きるのは、もうやめよう」。私は号泣しながら、「神様、もう一度だけ、チャンスをください。必ず生き直します」そう心に誓った出来事でした。

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