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千田律仁さんのSTORY 「もう一度だけ、チャンスをください」大切なことに気付いた“人生のやり直し”

悩みやつらさは人によってまったく違う

手術では、胃の3分の2を切除しました。かなり小さくなったので、食べる量を減らして、消化の良いものを摂るように言われました。それまでの感覚で食べると、とても苦しくなってしまいます。特に油には注意が必要です。少量でも質が悪いと、気持ち悪くなってしまう。当時は、食べたら2時間は必ず横にならないといけませんでした。
職場には2カ月で復帰しましたが、とても仕事ができる状態ではありません。74キロあった体重は57キロまで減って、体はふらふら。会う人みんなに「大丈夫?」と心配されます。見かねた当時の上司が「少し仕事を休んだらどうだ」と提案してくれ、結局1年半休職しました。
いまは、なるべく外食を控えて、家でゆっくり食べるようにしています。それでも、食後1時間は休憩が必要です。がんになるまでは、好きなものを好きなだけ、好きな時間に食べていました。食べられる量が少なくなっても、いままでと同じようにお腹が空きます。気持ち悪くなるとわかっているのに、「まあいいや」と思って食べてしまう。案の定、具合が悪くなって、冷や汗をかきながら仕事をしたことが何度もあります。食べないで生きていけるなら、どんなに楽だろうと思います。
あるとき、「うちのお父さんは胃を全摘出したけど、普通に食べてるよ」と言われました。それは事実なのでしょう。でも、私は違うんです。術後の症状は人それぞれ、100人いたら100通りです。
事情をご存じでない方から「ご飯は残さないほうがいいよ」と言われたこともあります。病気に限らず、人が抱えるつらさや苦しみは、本人にしかわかりません。表には出さないだけで、みんなそれぞれに悩みを抱えて生きています。自分が平気だからと、他人も同じだと決めつけてはいけない。こんな年になってから、やっと「人を見た目で判断するのはやめよう」と思えるようになりました。

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