大島直也さんのSTORY がん患者を助ける立場から当事者に。「社会に足りないもの」を伝えていく
無理やり行動を起こそうとしない
先日、緩和ケアに関する本を読んで「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉を知りました。すぐに答えを出せない状況に対して、むりやり白黒を付けようとするのではなく、答えが出せないことを受け入れ、わからないことを考え続ける力です。
不安から逃げるのではなく、正面から向き合うのでもなく、抱えながらともに過ごす。すると、いつの間にか不安が少し和らいでいたり、その一部が解消できたりする。病気に限らず、そんな経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。
がんを患い、「悔いのないように仕事をがんばろう」「子どもといっぱい遊んであげよう」と考える。それはもちろん素晴らしいことですが、がんになったからといって、「こうしなければ」と気張る必要はありません。残りの時間を意識しながら、いつも通りの生活をすればいいのだと思います。
気持ちがふさぎ込んで、動けなくなる人もいます。そうしたときは、周りの人たちにサポートしてもらいながら、前を向けるまで待ったほうがいい。焦って情報を探す中で、不適切な治療法や高額な商品を選んでしまう危険もあります。あるいは「もう治療はしない」と極端に考えてしまうこともあります。
少し心が落ち着いたら、相談支援センターや患者会のような、近い場所で情報を集めるのがいいと思います。1人で調べるのでは、やはりネガティブに考えてしまいがちですし、必要な情報に気づかないことも多い。
病気を持つ人同士で話せば、自分に近い情報を聞くことができますし、みんながどんなことを調べているのかもわかります。「1人ではない」ということの大切さは、精神的な部分だけではありません。人との交流が、ヘルスリテラシーを高めるのだと思います。