大島直也さんのSTORY がん患者を助ける立場から当事者に。「社会に足りないもの」を伝えていく
自分の「やりたいこと」に欲張りになる
私はさまざまな場面で、がんについての発信をしています。するとサバイバーの方から、「あなただからできるんだ」と言われることがあります。その裏には、「誰もが発信できるわけではない」「声を上げられない人のことも考えて欲しい」という気持ちがあるのかもしれません。社会に向けて活動しているサバイバーは、私のほかにもたくさんいます。それに、最近はSNSなどで多くの人が発信しています。そうした姿を見て、「私も社会活動しなければいけない」「できない自分はダメなんだ」と感じてしまう人もいると聞きます。
当然ですが、みんなが発信をする必要はありません。やりたいこと、やるべきだと感じることは、人それぞれに違うはずです。誰かを基準にして、同じことができないと気に病むのではなく、自分にベクトルを向けるべきです。もちろんその中で「自分も発信したい」と感じるのであれば、どんどん発信すればいい。誰もが、もっと欲張りでいいんです。
病気について、自分では周囲や社会に向けて言えない人もいます。だからこそ、私たちのような立場から、がん患者の想いを伝えていかなければいけません。声を上げられる人たちが発信していかなければ、声を上げられない人たちの想いは埋もれてしまいます。
同じ「がん」でも、ひとくくりにできるものではありません。病種はさまざまですし、人によって辛さは違います。ステージ4の私を見て「もうすぐ死んでしまうのではないか」と考える人もいますが、差し支えなく仕事もできています。
正しい理解がされていないということは、患者側に対しても言えます。ステージ4の人が、「ステージの低い人は動けるし、そんなにつらくもない」といったニュアンスを感じさせる発言をしていることもあります。
がんになっていない人にも、がんで苦しんでいる人にも、がん患者が何を考え、何を感じているのかを正しく伝えていく。がんを患う人と接する立場から当事者になった私の役割として、これからも自分ができることをしていきたいと思います。