大島直也さんのSTORY がん患者を助ける立場から当事者に。「社会に足りないもの」を伝えていく
理解しようとする姿勢が相手を助ける
私は、自分ががんになったことで、より患者さんの気持ちに寄り添おうと思うようになりました。もちろん、以前から大事にしていたことですが、患者さんが何を辛いと感じているのか、もう少し深いところまで考えるようにしています。
例えば、施術をしても痛みが取れないこともあります。病状から考えて仕方のないことであっても、辛い思いをしている本人にとっては簡単に割り切れるものではありません。患者さんの話を聞いて、なんとか改善しようとする。その姿勢が患者さんの苦痛を和らげることもあるのだろうと感じています。
誰かに対して、「助けたい」「力になりたい」と感じて、その相手のことを理解しようとする。これは誰もが普段からやっていることだと思います。しかし、間に病気というラベルが貼られると、難しくなることもあります。
私ががんになってから、周囲の人が「大丈夫なの?」「無理しないほうがいいよ」と助けてくれることがあります。気持ちは嬉しいけれど、「できる?」と聞いてほしい。初めから「やらなくていい」と決められると、まるで社会の一員ではないと言われているような阻害感を覚えます。
私は障害者スポーツのトレーナーもしていて、障害者の方と関わることもたくさんあります。そこでは、ざっくばらんに「これはできる?」「わからないから聞きたいんだけど、どうしたい?」と聞くようにしています。それに対して、ネガティブな反応はまずありません。
周囲が病気の当事者に聞くのと同時に、本人が自分の思いを言葉にすることも大事です。やってほしいこと、やってほしくないことをわかってもらう。もちろんすべて理解してもらうことはできません。「わからないことがあれば聞いてほしい」と伝える必要もあると思います。