人見伊都子さんのSTORY 病気になったからこそ出会えた私。2度のがんを越えて、輝くランウェイへ。
「私は絶対にがんじゃない」
メイクと衣装をばっちり決めて、モデル気分でランウェイを歩く。いま私がいちばん夢中になっているのが、乳がん検診や早期発見を啓蒙するチャリティーイベントです。プロのモデルさんと同じランウェイを、プロのモデルさんと同じヘアメイクさんに綺麗にしてもらって、歩かせてもらう。スポットライトを浴びて華やかな気持ちを味わえるなんて、がんを宣告されたときの私が知ったら驚くと思います。
身体の異変に気づいたのは、2017年の夏でした。夫との北海道旅行を控えていたときに、突然乳腺が張ってきたんです。下着が擦れるだけでも痛みがあったんですが、授乳しているときに乳腺炎になったことがあったので、「乳腺のトラブルかな」程度に思っていました。
旅行では釧路や網走に行ったはずなのに、その記憶はいまもぼんやりとしか思い出せないんです。旅行中にも乳腺の張りはひどくなる一方で、胸は硬くなって、痛みも激しくなってきます。あまりにも痛いので、「もしかしたら、がんかもしれない」と嫌な予感がしてきました。そんなことを考えていたから、自然の景色を味わうこともできなかったのだと思います。
旅行から帰って、まず乳腺クリニックに行きました。人気があってなかなか予約が取れないところで、診てもらえるまで一週間以上かかってしまいました。その間に、さらに胸は大きくなって、乳首も陥没していきました。それでも「これは絶対乳腺の病気で、がんではない」と必死に言い聞かせていました。家族を動揺させたくなくて、病院に行くことは誰にも言えませんでした。
エコー検査の結果、腋の下にゴロゴロとした大量のしこりが見つかりました。多分この段階で、先生は私のがんの種類がわかったのだと思います。5~6ミリのしこりに、針生検をしてもらいました。
そこからお盆休みが挟まったので、検査結果が出るのに2週間かかってしまった。恐かったけれど、それでもまだ「絶対に自分はがんではない」と言い聞かせていました。ずっと乳がん検診をきちんと受けていたのに、乳がんになるなんて信じたくなかったんです。
針生検の結果、しこりはやはり初期のがんでした。でも「初期」なのに抗がん剤から治療が始まるといいます。初期なら、手術なのではないか。このときから、がんに対する知識のない私でも「ちょっとおかしいな」と感じ始めました。