人見伊都子さんのSTORY 病気になったからこそ出会えた私。2度のがんを越えて、輝くランウェイへ。
がんになって「できる」ようになったこと
盲腸がんはステージⅡで、腹腔鏡手術で切除しました。転移はしていませんでしたが、手術で一部のリンパ節も切除されていたので、念のため抗がん剤治療も受けました。いまではそれから5年経ち、乳がん発覚からは8年が過ぎています。
現在、治療はホルモン剤の服用のみ続けています。炎症性乳がんの5年生存率は、40~50%だと言われていて、主治医は「よくここまで乗り越えられたね」と褒めてくれます。主治医も不安と向き合いながら、一緒に闘ってくれたのだと思います。
もちろん、再発の不安はいつも頭の隅にあります。それでも、異変があればすぐに検査を受けさせてもらえるおかげで、「なにかあってもすぐに治療を受けられるから大丈夫」と思うことができています。
怯えている時間はもったいない。元気にいられる時間が短いのだとしたら、いまを楽しまないと損。そう思えるようになりました。その大きなきっかけとなったのが、がん患者のフラダンスサークルとの出会いです。同じ経験をした仲間と支え合いながら笑顔で踊る時間に、心を救われました。
不安になる暇をつくらないように、ほかにも、がん教育の外部講師をしたり、患者会へ参加したりするようにしています。そうするうちに、自然と、以前より気持ちが外に向くようになりました。
がんになって、できなくなったことはたくさんあります。
たとえば、がん発症の2年ほど前に、趣味で始めたアーチェリーです。リンパ浮腫の症状で、弓を引く動きができなくなってしまいました。リンパ浮腫がなかったとしても、以前のような力は出せないと思います。
でも、がんになったからこそできるようになったこともあるんです。
先ほどお話ししたように、いまいちばん夢中になっているのが、モデルとして歩くチャリティーイベントです。大阪のホテルでクリスマスの頃に開催されるもので、これまで2回参加しました。プロのファッションショーに先立って行われるものですが、お客さんの前でスポットライトを浴びて、歩かせてもらえます。
事前にプロのモデルさんのレッスンがあって、筋トレも頑張っています。乳がんの人が集まって、みんなで一緒に頑張れるということも、すごく嬉しい。私の中では「がんになっても、こんなに元気になったよ」「この1年間、頑張ったよ」って胸を張れるイベントです。
がんにならなかったら、こんなに華やかな舞台を歩くことはできませんでした。がんには絶対になりたくなかったけれど、この喜びは、がんになったからこそ味わうことができているんです。「がんになったからできることがある」という気づきを、大切にできる自分でありたい。治療を乗り越えて元気に過ごせているいまを、無駄にせず生きていきたいと思います。