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宮本豊司さんのSTORY がんのことは考えない。 「待ってくれている人」との“つながり”に生きる

「こうすれば治る」と考えない

ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』という本があります。ナチスの収容所で過ごした著者が、精神科医・心理学者として実体験をもとに書いたものです。昔に読んだことがあり、がんが再発したときに読み返してみました。

 

収容所内で「クリスマスには連合軍が助けに来る」と噂が広まると、みんなそれを拠り所にして頑張ります。でも、当日になっても何も起こらない。そうして、クリスマスが過ぎたころ、大量の死者が出たそうです。

 

フランクルも過酷な状況にありましたが、別の収容所にいる奥さんのことを想い、「妻のために生き残ろう」と頑張ったそうです。それで彼は生還することができました。

 

『夜と霧』には、外的な希望に自分を託していると、それが叶わなかったときにすがるものがなくなってしまうと書かれていました。逆に、「仕事をやり遂げるために」「家族のために」と、内的な関係性を心のよりどころにしていた人は、絶望を乗り越え、生き残ったと分析されています。

 

その状況は、病気にも似ています。「抗がん剤を打てば」「酒をやめれば」「運動すれば」――。「こうすればがんが治る」と自分の外側の何かにすがると、うまくいかなかったときに希望を失ってしまいます。

 

だから、私はがんのことを考えないようにしています。病気のことは自分でどうにもできないから、医師に任せておけばいい。幸い、副作用がなく、気にしないでいられる状況でもあります。つらい副作用があったら、そんなことは言っていられないかもしれません。

 

がんを気にして生きるよりも、私は、待っていてくれる存在のために生きたい。私を愛してくれる家族のために生き、将来の読者のために小説を書きたい。その存在とのつながりが、私の生きる糧なんです。

 

待っていてくれる人がいる。だからやりたいことがある。その幸せを、前よりも強く感じています。