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寺山雅代さんのSTORY もう一度、自分の声で。言い訳しない、嘘をつかない、我慢をしない私で生きる。

舌がんの人に希望を持ってもらいたい!

手術後すぐの食事は、流動食でした。そこからイメージトレーニングをしながら、だんだんと噛んで食べられるようになっていきました。イメージトレーニングはYouTubeの大食い動画です。退院する頃にはほとんど普通食に近い食事を摂れるようになって、看護師さんからは「そこまで食べられるようになる人は少ない」と言われました。
先生が手術前に「いままでのようには食べられなくなる」と言ったのは、私と同じような症例を見てのことだと思います。じゃあ、私が食べられるようになればいい。そうすれば、先生は舌がんの患者さんに、「食べられるようになる人もいますよ」と言えるようになる。「誰かの希望になりますように!」と思いながら、食べるリハビリをしました。
ただ、話せるようになるまでは、とても大変でした。いまは相手との意思疎通には困らないくらいに発声できるようになりましたが、それも手術をしてから5年たって、やっとです。
手術をしたのはコロナ禍で、入院期間中は娘たちと面会できませんでした。起き上がることもできずに、オンラインでの会話も無理です。
そうして退院して2カ月ぶりに会話をすると、下の娘が「お母さん、何言ってるかわかんない」って言ったんです。思い返すと冷たい言い方だと感じますが、その言葉が当時の自分には糧になりました。娘のおかげで「もっとリハビリを頑張ろう」と前を向くことができたんです。
ただ、退院後のリハビリが大変でした。入院期間中は言語聴覚士さんが指導してくれますが、その後は退院するときに練習用の文章をいただくだけなんです。一人で黙々と音読していても楽しくありません。それで思いついたのが、ボイストレーニングです。私は歌うことが好きで、舌の回りを鍛えたら、もっとしゃべれるようになるんじゃないかと思って。ちょうど自宅の近くに教室があって、習うことにしました。
それに、なるべく人と接しようと思いました。声が出るなら、わかりづらくても、やっぱり自分の声で伝えたい。外出するときはノートを持ち歩いて、話しても伝わらないときは筆談をしていました。
家の近所のスターバックスにも、よく行きました。カタカナのメニューを注文するのがリハビリになると思ったんです。伝わらないだろうなと思いながら注文しても、店員さんは身振り手振りで「これですよね」と対応してくれる。生活の中で誰かとコミュニケーションをできることが、自信になっていきました。
とはいえ、やっぱり難しい場面もあります。つい最近、服屋さんで試着をしたくて、店員さんに「羽織っていいですか?」と聞いたら英語で返されたんです。5年間も一生懸命リハビリをしてきて、英語に聞こえるなんて。でも、こうした経験も何かの役に立ちます。最近、病気について人前で話す機会をいただけるようになって、そこでのネタになるんです。

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