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水戸部ゆうこさんのSTORY 私の命をつなぐ「ミラクル」。「自分の人生を生きる」という選択を支えるもの

朝のお風呂で「死」を考える

2018年の4月頃、「なんだか最近、咳が続くな」と感じるようになりました。私は花粉症なので「アレルギーが咳に出たのかな?」と思い耳鼻科に罹っていましたが、なかなか治りません。近所の内科でレントゲンを撮ると、両方の肺に白い影が散っていました。慌てて大きな病院に行ったら、すぐに検査入院。ステージ4の肺腺がんでした。

自分がそんな状況になっているなんて、まったく気づきません。うちには2人の息子がいて、当時は小学校5年生と2年生。私は仕事もしていて、育児に家事に仕事にと忙しい毎日でした。そんな生活の中で咳が続くからといって、いちいち気にしていられないんですね。先生にがんだと告げられても、全然受け止められません。頭の中では、明日からも子子供に合わせて予定をこなすことを考えていました。

手術も放射線治療もできないほどにがんは進行していて、残されたのは抗がん剤治療だけです。お薬を飲むと、すぐに副作用が出ました。顔全体が炎症するような状態で、おなかが緩くなったり、皮膚が虚弱化したりします。見た目が気になって、子供の学校で用があっても外出する気になれません。手が荒れ、爪が割れて、料理もまともにできない。「こんな状態でお母さんを続けていけるのかな」と、経験したことのない不安を感じました。

 

病気がわかってから1カ月後くらいのとき、息子の野球の試合を見ながら、ママ友の一人に病気のことを打ち明けました。すると、目の前でボロボロと泣くんです。その姿を見て、「この病気のことは人に言ってはいけないんだな」と考えるようになりました。

毎日不安で、人にも言えない。ものすごい孤独感。子供が目の前にいるときは、まだいいんです。仕事を辞めていたので、毎朝子供と夫を送り出すと1人になります。するともう、頭の中ではグルグルグルグル、不安や恐怖ばかりが湧いてきます。

がんがわかってすぐの頃は、体を温めたほうがいいと聞いて午前中にもお風呂に入っていました。お湯に浸かっていると、どんどん力が抜けていきます。お風呂の中で、外の音もあまり聞こえない。一人でお湯の波打つ音を聞いていると、頭の中に「先が長くないんだったら、悩んでいるよりも死んじゃったほうがいいのかな」と浮かんできます。ところが、死のうと考えても、どうすればいいのかがわかりません。抱えたものの重さに潰されて、自分ではどうにもできない時期が続きました。

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