水戸部ゆうこさんのSTORY 私の命をつなぐ「ミラクル」。「自分の人生を生きる」という選択を支えるもの

自分の発信が誰かの役に立つはず
がんの発覚から2年ほど経ち、幸い大きく悪化することなく生活していました。精神腫瘍科やレジリエンス外来にも通って、少しずつ病気に向き合うことができるようになると、「いったん仕事を諦めたけど、短時間でもできないか?」と社会復帰を考えるようになりました。
子供を持つがん患者が集まる、「キャンサーペアレンツ」というコミュニティがあります。ある日キャンサーペアレンツのメルマガを読んでいると、「がんの方を採用します」という求人情報が目に入りました。
募集は、社労士事務所での事務のお仕事。病気になる前も事務のお仕事をしていたので、「これだ!」とすぐに応募しました。面接では毅然としていようと思ったのですが、自分の想いを話しているうちに涙が溢れてきてしまいます。面接官のお二人も泣きながら2時間お話しして、翌日に採用のご連絡をいただきました。
ちょうどその頃、だんだんと抗がん剤の効果が薄くなっていました。私のがんでは、使える薬の種類が限られています。これからどうなることかと思いましたが、そのタイミングで主治医が治験の得意な先生に変わって、治験を始めることになりました。治験となると入院が必要ですが、新しいお仕事も決まっています。事務所に事情を説明すると、快く受け入れてくださいました。
事務所の代表は脊尾大雅さんという方で、もともと精神科の病院で精神保健福祉士として勤めていました。世の中には精神科に罹らなければ生活できない人や、障害を持つ人もいる。自分が社労士になって、誰でも活躍できる社会にしたい。そうした志から、がん患者を採用したのだと思います。
脊尾さんには、事務の仕事に加えて、「あなたの闘病についてブログに書いてください」と言われました。それで情報発信をするようになったのですが、最初はすごく怖かった。自分の弱い部分を書いて発信するなんて、人前で裸になっているような感覚です。でも、自分の経験が誰かのためになるはず。そう考えて拙い文章ながらも発信を始めて、いまでは仕事に限らず各種SNSで1日2回くらい投稿しています。