杉浦雅昭さんのSTORY 病気とともに訪れた「奇跡」。人生に“自分軸”を取り戻す

「仕事を休めない」は思い込み
手術後、抗がん剤治療が始まりました。抗がん剤を受けると、免疫力が劇的に落ちてしまいます。もともと基礎体温が37度と高めだったんですが、36度以下に下がりました。すぐに鼻水が出たり、咳き込んだり、体調管理にはかなり気を使わなければいけなくなりました。
少しでも体調が悪いと、抗がん剤治療に影響します。例えば風邪を引いてしまうと、抗がん剤治療は1週間延期になってしまいます。つらい治療を覚悟して病院へ行く分、延期されるのはとてもストレスでした。
抗がん剤の副作用では、ひどい手足の痺れが出ました。手袋をしないと物を触ることもできません。車のハンドルが持てなくなり、通勤は電車に切り替えました。でも三半規管もおかしくなっていて、一駅移動するだけで、気持ち悪くなってしまいます。仕事に行きたくても、行く方法がない。
抗がん剤を始めて最初の1週間は、会社の厚意で休ませてもらいました。同僚の中には「これからは俺がやるから安心して」と声をかけてくれた人もいます。病気になる前は、「自分は替えがきかない」「休めない」と思い込んでいましたが、本来は誰かが抜けることで仕事が滞ってはいけないし、ひとりで抱える必要はありません。当時はがん患者扱いされることに寂しさを感じましたが、いまでは、「そんなに格好つけなくていい」と思えるようになりました。