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杉浦雅昭さんのSTORY 病気とともに訪れた「奇跡」。人生に“自分軸”を取り戻す

大腸がんの「黄金ルート」

術後の入院中、隣のベッドにいた方も大腸がんを患っていました。その方が教えてくれたのは、大腸がんの「黄金ルート」です。大腸がんが最短で進行するとき、「肝臓、肺、脳の順に転移し、神に召される」。とても明るく、笑顔で語っていましたが、その方はすでに脳まで転移が進んでいました。
すると、退院して約1年後、肝臓の超音波検査で小さな腫瘍が見つかりました。先生に「このサイズを見つけた技師の方に感謝してください」と言われるほど、極小のものです。体への負担も考えて、脇から穴をあけて患部を取り出せる、腹腔鏡で手術してもらえました。
さらにその半年後、造影剤の検査で肝臓に再び転移が確認されました。このときは、開腹手術で取ることができましたが、肝臓に2度目の転移です。黄金ルートに従うと、次は肺です。
そうして肝臓の手術から半年後、念のため、造影剤などの検査を腹部から胸部に広げたところ、やはり肺への転移が発覚しました。幸い、このときも初期で見つかったため、開胸せず、胸腔鏡の手術で取ってもらえました。
いずれも早い段階で見つかっていますが、転移を繰り返すたびに、生存率は下がります。肺へ転移したとき、私の5年生存率は10パーセント。下がっていく生存率を聞かされるのは、つらいものです。
しかし、どんなに苦しくても、子どもたちの前で泣くわけにはいきません。泣きたいときは車の中で思いっきり泣きました。それでも子どもたちの顔を見ると耐えきれず、寝付いた横で声を押し殺したこともあります。
これから先、子どもたちの成長を見られないかもしれない。それでも、自分にできることはないかと考えて、ビデオレターを遺すことにしました。毎年の誕生日、思春期を迎えたとき、高校や大学受験、就職――。節目のときに観てもらえるように、ビデオカメラを買って、自分で撮影しました。でも、いまのところ録画したデータは、妻にも内緒にしています。

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