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杉浦雅昭さんのSTORY 病気とともに訪れた「奇跡」。人生に“自分軸”を取り戻す

妻の両親に「死んだ後のこと」を頼む

当時、次男は生まれたばかりで、3歳の長男が自閉症の診断を受けた直後でした。長男には歩行障害もあり、専用の装具を使用しています。健常な子どもを育てるにもお金がかかるというのに、自分にもしものことがあったら、子どもたちはどうなるのか。
自分の父は他界し、母は遺族年金で暮らしています。自分が死んでしまえば、経済的に頼ることができる相手は、妻の両親しかいません。誰かにお金のことを相談するのは、父親として情けない。しかし、子どもたちの将来を考えると、自分のプライドなんて気にしてはいられませんでした。
妻の両親を訪ね「もしものときは」と相談すると、「そんなこと言っちゃいかん。とにかく治療に専念しなさい」と励ましてくれました。しかし、私は「もう治らない」と言われています。「ありがとうございます」と言いつつ、引き下がるわけにはいかない。「わかった」と返事がもらえるまで、頭を下げ続けました。
私ががんになったことは、母にとっても非常にショックが大きかったようです。夫を胃がんで亡くしたばかりなので、なおさらだったと思います。
それでも、クリスチャンである母は「神様は超えられない試練は与えない」と何度も言ってくれました。私は子どもの頃とても病弱で、小児喘息などで入退院を繰り返していました。そんな私を育てた母は、「今回も大丈夫」と、すがるような思いだったのかもしれません。
「あなたなら超えられる」という言葉は、励ましになる場合もあるでしょう。でも、当時の私にはそう感じられませんでした。「なにがなんでも生きなければいけないのか」と、プレッシャーだったんです。

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