杉浦雅昭さんのSTORY 病気とともに訪れた「奇跡」。人生に“自分軸”を取り戻す

父の病気は「簡単な手術」から「余命半年」に
私が32歳のとき、父が胃がんで亡くなりました。公務員で定年まで勤め上げ、62歳でグループホームの館長として働き出した矢先のことです。
がんは初期に発覚し、医師からは「簡単な手術」だと言われていました。実際に、手術は1時間もかからず終わっています。しかしその手術で、微小ながん細胞がすい臓に浸潤していたことがわかりました。手術後、医師の診断は「もって半年」に変わっていました。
そのとき、私ははじめて父の涙を見ました。私の結婚式でさえ泣くことのなかった父が、診察室で、嗚咽を上げ、泣き崩れた。先生の話が終わっても椅子から立ち上がれず、私が抱きかかえるようにして部屋を出たのを覚えています。
ただ、自分に残された時間が半年しかないと知りながらも、父の生活は変わりませんでした。平日は仕事へ行き、週末は妹が経営するカフェを手伝う。限られた時間を家族のために使う父をもどかしく感じて、「なんで自分のことに時間を使わないんだ」と怒ったことがあります。しかし、父は「これでいいんだ」と、頑なに生活を変えようとはしませんでした。