杉浦雅昭さんのSTORY 病気とともに訪れた「奇跡」。人生に“自分軸”を取り戻す

目の前に現れた「父と同じ道」
市民病院では、「まだ初期なので、簡単な手術で終わる」と言われました。でも、父が当初受けた診断と同じです。簡単には信じられません。
そんなとき、友人と話す機会がありました。病気の話をすると、偶然友人の奥さんが消化器内科の看護師ということで、専門の病院を紹介してくれることになりました。
その病院での診断結果も、やはり大腸がん。そのとき、1年前の健康診断で“異常なし”だったレントゲン写真も見てもらいました。すると、そのレントゲンにすでにがんが写っていたことがわかりました。見落とされていたんです。
先生は、「一見すると簡単な手術のように見えるが、専門の施設がある病院で検査してもらうように」と大学病院を紹介してくれました。大学病院の先生は開口一番、「若いのにすごいの見つかっちゃったね」と。腫瘍は下行結腸にあり、手術で患部を切除しました。
手術の際、念のためにと周辺のリンパ節も取り出して検査していました。そこでリンパ節への転移が発覚。これはがんがかなり進行していることを意味します。ステージ3Aで、5年生存確率は30~40パーセント。先生には、「根治不可」とはっきり伝えられました。
「簡単な手術」と言われたけれど、蓋を開けてみたらリンパ節に転移していた。父がたどった道に重なります。自分ではあまり覚えていませんが、がんが進行していると知ったとき、私はとても動揺していたと妻から聞きました。「お前に何がわかるんだ」と妻にきつい言葉をかけたこともあります。
妻はあるときから、私の病状に無関心なそぶりをするようになりました。転移が見つかったと伝えても、「取ればいいよね」と簡単に返されてしまう。はじめは「なんで気にしないんだろう」と理解できませんでしたが、それが妻なりの気遣いだったのだと思います。どんなに心配しても状況が好転するわけではない。私が日常生活を送れるように、普段と変わらず接してくれていたんです。